脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!
脳は複雑。現時点でもまだ解明されていないことは多いが、学習効率をいかに高めるかはブラックボックス的なテストを積み重ねてある程度ノウハウがたまっているようだ。本書でその内容を簡潔に得ることができる。
勉強をする目的はいろいろある。いつ、どのように成果をだすのかによってその学習方法を考え込む必要があるが、本書では効率的に学習効果を出す手助けになりそうだ。一部をまとめてみたい。
記憶力を高めるために ()
- 環境に変化をつけたほうが記憶が定着しやすい。静かな場所よりむしろ五感に刺激が与えられる環境のほうが、記憶の呼び出しに効果がありそう。
- テストは記憶の定着に有効。結果に関係なくテストをおこなうと自体に記憶の定着に効果がでる。
- 記憶の定着のためには学習の時間を分散させたほうが効果的。間の感覚はその記憶力の定着が必要となる時(たとえばテストの日)がどれだけ先にあるかによる。間隔を開けると定着に時間がかかるが、長期間記憶が定着する。
ブレイクスルーの手助け
- ある問題に対し考えが行き詰ったときには、一度ブレイクの時間を与えるとよいアイデアがうまれる。
反復練習のやりかた
- 反復練習を行う際には規則的な繰り返し練習よりも、ランダムでの練習のほうが成果があがる。また学習した内容を応用することも容易になる。
睡眠・無意識
- 睡眠中の眠りの深さによって学習の記憶や運動の記憶の定着などが変わってくる。何を定着させたいかによって、学習と睡眠のタイミングを変えて効率をあげることができる。
このようにこれまでにおける様々な実験の成果により効率をあげる学習・勉強方法が解明されている。これからなにかを習得する必要がある方はこの本の内容を実行すれば必ずその手助けになるだろう。
人工知能の脅威の本質
Microsoft 謹製のTayが話題になっている。
これはよい人工知能脅威論の火付けになってしまったと思う。皆が持っている漠然とした脅威を具現化したMicrosoftは実はわざとやっているのではないかとさえ思ってしまう。しかし本当に脅威は「人工知能」にあるのだろうか。
私は暴言を学習してしまった原因は、当然暴言を学習させた人間がいるからと考える。人工知能は無機質なプログラムでありそれに対し人間らしさを投影するのは人間の脳。人工知能は道具の一つであるという認識をもたないといけない。
そう本当の脅威は人工知能そのものではない。実行知能を使ってほかの人間に害を与えようとする人間なのだ。そうした人間を取り締まる法や規制の整備を手遅れになる前に考えておいたほうがよいのではないか。これは人工知能を禁止することを唱えているわけではない。もはや禁止ることは不可能だし、科学の発展の良い面を無視してはいけない。ただし新しい道具を利用して悪用をする者に対して、犯罪行為として取り締まる規制・法律が必要なのだ。包丁は人を殺す道具として使ってはいけない。この概念を人工知能にも適用する検討を一刻も早く考えておく必要があるだろう。さもなくば近い将来に大きな混乱を招くに違いない。それは人工知能のせいではなく、使用をおこなうものの責任とならなくてはいけない。
人工超知能が人類を超える シンギュラリティ―その先にある未来
人工超知能が人類を超える シンギュラリティ―その先にある未来
- 作者: 台場時生
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2016/02/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読了。読む前の内容の期待値とはよい意味で違っていて、著者の未来の行く先とどう構えるべきかという備えの考え方を新たな知見として得られた一方、その著者が展開する行く先に対して自分の思考実験ではそこに到達しませんでした。
この本では過去、人類が歩んできた革命(農耕革命、産業革命、情報革命)をレビューしさらに将来起こるべき革命(ロボット革命、生物革命)についてを展開。その革命後に人類の行く末や形を、丁寧に解説し、予言していくものである。特に未来の革命が起きた後の人間の幸福感がどうなるかの言及も行われており、化学技術の進化を期待していたのですが、それよりもむしろ哲学的な方面を丁寧に学ぶことができたのが収穫になった。
一方で著者が考える未来についてもやもやが残るところもあった。著者が考える科学技術の「技術的特異点(シンギュラリティー)」の果てには人類は神に近い存在となり、この世の悩み、苦しみ、欲望をすべて低コストで叶えることができる存在になっているという。一方でなんでも手に入れることができるので幸福感は薄くなっていく、という結論だ。
この結論についてはしっかり論理だてた結論というのは理解できたのだが、この結論に行き着くためには全人類が同一価値観で、「苦しみ」「欲望」「悩み」「幸福」が定義できた時ではないかと私は考える。そして、それは果たして技術的特異点で統一できる・されるものなのかーーー私の思考実験ではそこに到達しなかった。
到達点には疑問が残ったのだが、この本に書かれている未来感は大きくはずれたものとはならないとも考えます。また人類がどう歩んでいき、どう歩んでいくべきなのかをよく考えるよい機会を与えてもらった。科学技術の果てにある人類の未来を個々が考えることができるよい本だ。