思考ノイズ

無い知恵を絞りだす。無理はしない。

羽生善治 闘う頭脳 (文春文庫)

 この超人の頭脳について触れてみたいと思うのは自然なことではないだろうか。

羽生善治 闘う頭脳 (文春文庫)

羽生善治 闘う頭脳 (文春文庫)

 

 

この本にはプロになり7冠を取る前に大注目されていたころから、ここ最近までの幅広い期間に出版された羽生善治の著書ならびに、対談の記録を複数まとめた文庫書である。将棋であったり、棋士としての人生観、プライベートの過ごし方まで多岐にわたり書かれている。

 

そもそも将棋という盤を取り巻くの小宇宙は人生の縮図といっても過言ではない。勝つか負けるか、また勝つためにどのようにふるまい、研究し、人と付き合っていくか、人生を単純化したような世界観をみることができる。

 

その小宇宙の中で四半世紀以上トップで張り続ける男がご存知のこの男なのである。選りすぐりの将棋の天才・努力家が集う世界で頂点で居続けられるこの人の頭脳に触れてみたい、と思うのはとても自然のことではないかと思う。

しかしながらその答えは見つからなかった。とても頭の回転が速く、説明がうまい、というのははしばしに感じることはできるのだが、自分が超人たるゆえんをつかみ取ることはできない。しかしよくよく考えてみると自分がなぜそんなにすごいのか、ということをきっちり説明することは難しいだろう。例えば、どのように息をしているのか、どのように腕を動かすのかという、当たり前のことを説明することは難しい。羽生さんも将棋を小さいころから当たり前のように指し続け、あたりまえのように勝つことを目指して研究を続けてきた。だからどうしたら羽生さんのようになれるのか、という答えを羽生さん自身が持っているわけはないのだ。

 

ただ、その答えを見つけることができなくても、彼の生き方・考え方の片りんはとても参考になる。この本では、将棋の世界でトップを張り続ける男の片りんを長い期間の記録として味わうことができた。